あの日のことは今でも記憶に残っている。
雲一つない青空に、満開の桜の花。あと少しで2年生になる、春休みの昼下がり。
『じゃあね』
よく言えば「聞き分けがよかった」ってことになると思う。
けれどあの時、あたしが睦月を引き止めていたら何か変わっていたかもしれない。
今そう思ったって無駄だって事くらいわかっているけれど。
……もうあたしと睦月の間を埋める術(すべ)なんて、一つもありはしないから。
それでもあたしと睦月の関係が「友達」に戻っただけで、私に対する睦月の接し方や扱い方は変わらなくて。
睦月も周りの皆も優しくて。
私も睦月には出来る限りいつもの態度で接して。
唯一変わったのはあたしがサッカー部を辞めたこと、あとあたしの嫌いなものが二つ増えたことくらいだった。
あの日、どしゃ降りの雨でも降っていたら少しは気持ちが楽になったかもしれない。
醜いあたしの気持ちとか涙とか全部洗い流して、また笑顔で歩いていけると思ったから。
けど、その日は憎たらしいほどに快晴で、桜は見事なまでに満開で、まるで「この日を忘れるな」と誰かに言われているような気さえして、あたしは青空と桜を睨みつけて泣くしか出来ずにいたんだ。
だから今も嫌いなの。雲一つない空が、悔しいほど綺麗な桜が。
一年前のあの日を、あの日のあたしと睦月を鮮明に思い出すから。
ねえ、睦月。
君は、あの日の空を、あの日の桜を覚えてる?
あたしは、未だに忘れられない。
あの日の空が、桜が、私を今も戒めるように、
脳裏にこびりついて消えないんだ――。
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